カルチャー心酔雑記

モラトリアムが延長戦に突入した大学生が、カルチャーとイチャイチャした記録です。

女性はいかにして女性アイドルを好きになるのか

私は女性アイドルが好きです。

 

アイドルという存在やファンという現象については、大学の授業で扱うことが多いトピックで、以前からよく曲を聴いたり映像を観たりしていたのですが、昨年末に決定的にあるグループのファンとなりました。

 

「女性が女性アイドルを好き」って今でこそ一般的な現象ですが、それでも時々「どうして男性じゃなくて女性なの?」みたいなことを聞かれることがある。女性アイドル周りの大人たちが第一にターゲットとするのはやはりオタと呼ばれるような男性ファン。そのイメージゆえ、女性が女性アイドルのCDを何枚も買ったり、握手会に行ったりする行動に対しては、疑問を感じる部分があるのでしょう。アイドルってそもそもは男性のリビドーを刺激するような存在として出てきたものだし。

 

これについてはなかなかうまく言語化できず、いつも「可愛い女の子が一生懸命に闘っている姿を見るのが好きだから」と答えていました。が、ちょっと前に、そんな心情をすっきりと例えてくれた一言と出会ったのです。

音楽クリエイターのヒャダインさんが毎回ゲストを招いてガールズポップ(というかアイドル)についてひたすら語る「ヒャダインのガルポプ!」というラジオ番組がありまして、そこにPASSPO☆の振付師である竹中夏海さんがゲストとして来ていた回にまさにこの話が出ててまして。そこでの竹中さんの例えが非常に秀逸だったのです。

 

女性が女性アイドルを好きになる感覚は、女性がセーラームーンを好きになる感覚に近い。

 

竹中さん自身が女性アイドルファンの女性であり、自分がアイドルを好きな気持ちを言語化するとこうなるのだそう。

 

何それめっちゃわかる。

 

なんと言ったらよいのだろう…寸分の違和感もなく言い当ててもらったというか、ぴったりな表現を拾い上げてくれたというか…とにかく、この感覚には全面的に同意できるなあと思う。

一概にセーラームーンと言っても「?」となる方が大半だと思うので、ここではもうちょっと細分化してみようと思います。竹中さんがゲストだったこの回を聴きつつ取っていたメモが残っていたので、そちらを元に項目を書き出し、勝手に考察してみました。

(ちなみにこのお二人にtofubeats氏を加えた鼎談がROLaという雑誌に載っていて、そこでもまさに同じような話をされていたので、そちらも参考にしています。)

 

・闘う女の子の成長

アイドルが「闘う女の子」であることは自明だと思うのですが、よく言われるようにファンの醍醐味のひとつはその成長を見守ることだと思います。長年応援してきた推しの子に対して、「こんなに立派になって…!」という感情を抱くことは、オタとしてかなりの生きがいを感じる瞬間であると思う。で、この「闘う女の子が成長する」という構図はまさにセーラームーンにも当てはまる。アニメを観たことがある方はわかると思うのですが、プリキュア同様に何シリーズも続けて放送されているんですね。彼女たちは戦士としても、思春期の女の子としてもちょっとずつ成長して行く。最終的にはセレ二ティになる。視聴者(原作の場合は読者)は成長の過程を一緒になって追うことになるわけです。

 

・衣装の非現実性

セーラー戦士たち、ミニスカートだし、マーズに至ってはヒール履いているし、それで闘えるのかよっていう服装している。機能性よりデザイン重視なわけだけど、幼少期にセーラームーンから多大な影響を受けた身としては、それにこそ憧れる気持ちがすごくわかる…。アイドルも一緒。ステージに立つ彼女たちの衣装は二次元っぽいというか、見るからに非現実的なんだよね。「強くありつつも可愛い」ことが重要なのだと思います。男性ファンからもてはやされるだけでなく、女の子からの憧れも得やすい。

 

・グループ内の人間関係

これはAKBメンバー卒業イベントなんかに顕著かと思う。マリコ様の卒業にあたって、長年一緒に活動してきたたかみなが感極まって泣く、というようなアレです。チームでやっている以上、友情が芽生えたり、確執が起こったりするのは必然なわけで、その関係性を眺めることもファンにとっては楽しみのひとつだと思います(もちろん、最終的にはプラスの方向に回収される関係性に限るのだけど)。セーラームーンだとうさぎとレイちゃんの関係性が象徴的だよね。ケンカばっかりだけど、心の底ではしっかりとお互いを認め合っているみたいな。女の友情には、女の子も共感できる。あとキャラ立ちも大事。

 

・変身前と変身後

ひとたび変身すれば地球の平和のために闘うセーラー戦士ですが、普段はごく普通の学生として日常生活を送っている。これにアイドルを当てはめるとどうなるか、竹中さんは「ブログやTwitter上での姿が変身前にあたる」とおっしゃっていました。女性アイドルのブログやTwitterが男性アイドルのそれよりもはるかにもてはやされるのはそこに理由があるのだと思う。ライブ後や出演番組の収録の合間の写真がアップされるのは、まさにこの「変身前」を意識的に見せているのではないかと。

 

・戦闘時に男性は必要ない

これ、大事です。アイドルに男の影があってはいけないのは自明だけれど、セーラームーンも戦闘時に男性の手はほぼ借りていない。タキシード仮面は直接的に役に立っていないんですね。闘うのに男は必要ない。女の子だけで敵と対峙して、打ち勝つ。そういう姿をなんてかっこいいのだろうと思ってしまう。女性が自立して困難に打ち勝つのに男性は必要ないわけです。

 

と、上記のように、意識している以上に二次元的に捉えているのだなあと思う。

しかし、幼少期にセーラームーンが大好きだった自分の過去を振り返ると、20年近く経っても憧れるものって変わらないのかとちょっとびっくりしてしまった。

ちなみに私はセーラーマーキュリーこと亜美ちゃんが一番好きでした。色で言うと青。当時から知的で品のある女性に憧れがあったのだと思う。

 

以上、備忘録として好き勝手にまとめてみましたが、最後に、2014年にブレイクしそう、かつ私が個人的に好きなアイドルグループが昨年発売した名曲をこれも好き勝手に2つほど挙げてみようと思います。

 


でんぱ組.inc「でんでんぱっしょん」MV【楽しいことがなきゃバカみたいじゃん!?】 - YouTube

 

一つ目。私が愛してやまないでんぱ組.incの『でんでんぱっしょん』。彼女たちは元々「電波ソングを歌うアイドル」というコンセプトで始まったらしいのですが、そんな電波ソングなのがまさにこれ。とにかくこのMVが素晴らしい。オタクっぽい要素はあまりなくて、観た最初の印象は「めちゃくちゃオシャレ!」でした。おそらくファン層を拡大する戦略の一環だと思うのですが、きゃりーぱみゅぱみゅ的な原宿っぽい感じが強い。カラフルでいろんな要素がぎゅっと詰まっている、他のカルチャーと接続性の強い彼女たちの特性をよく表した映像だと思います。

 

彼女たちのバックグラウンドとか活動歴とか知った上で聴くと、サビの「世界中につれて行っちゃうけど 普段通りにね」っていう歌詞がもうね…泣けて泣けて…。

 


Negicco / アイドルばかり聴かないで MV(full ver.) - YouTube

 

二つ目。新潟発アイドルNegiccoの『アイドルばかり聴かないで』。わかる方は聴けばピンとくると思うのですが、この曲、プロデュースが元ピチカート・ファイヴ小西康陽氏なのです。だから曲も歌詞もこのMVもまさにピチカートといった感じ。個人的には2番歌い始めの「ふつうの人はCDなんて もう買わなくなった」という歌詞に時代の変遷を感じてしまう。渋谷系の先がけとして一時代を築いたピチカートの小西さんがそんなこと言うなんて…。自然体な見せ方が多いNegiccoの中では珍しいタイプの曲だと思います。「ざんねーん!!」がたまらなく癖になる。